臨床で行う看護師のバイタルサイン測定の主なものは、体温・血圧・脈拍・SPO2・意識レベルになっていることが多いのではないでしょうか。
呼吸数や呼吸状態を観察することが臨床では後回しになっていることも多い印象です。ですが、SPO2値だけではなく、呼吸数の観察はとても必要です。
看護師として働いていると、患者さんのSPO2値が急に低下して、「急変です!」とドクターコールすることもあると思います。
そんな時、もしかしたら数時間前から呼吸数や呼吸状態は変化していたかもしれません。
意外と大事な呼吸数
“普段呼吸数なんて測ってないわ。SPO2で十分”と思っていませんか?病棟自体がバイタルサインに呼吸数を入れていないところもあるかもしれません。
でも、されど、呼吸数です。
呼吸数だけではなく、呼吸状態の観察も大切です。脈拍測定しているときに胸郭の動きもチェックしておきましょう。
その時に呼吸数がいつもより早かったり、遅かったり “あれっ?” と思った時や、いつもと様子が違う時など看護師の直感が働いた時は、呼吸数や呼吸リズムも観察することをおすすめします!
熱が出た時だけ呼吸数を測ったとしても、普段から測定していないといつもとどう違うのかがわかりません。そのため、できるだけ普段から呼吸の観察はしておきたいです。
例えば、熱もない、脈拍や血圧、SPO2もいつもと変わらないのに、呼吸が早いことがあったとします。そういう時、さまざまな理由で低酸素状態になっている状態かもしれません。敗血症など、何かイベントが起こる前触れかもしれません。
患者さん自身、自然と代償しようとして呼吸を早くしているからSPO2値が正常に保てているという時もあります。身体に予備能が残っているから、なせることなんですね。
SPO2が97%でも、呼吸数16回でリズム整の安定している時と、呼吸数25回の頻呼吸の時では意味が違います。心拍数や呼吸数をあげて、何とか酸素を体中に届けようとする身体の力によってSPO2値を正常に保っています。
でもいつまでもできるものではなく、身体が疲れてしまって呼吸数で代償できなくなった時に、SPO2が低下してしまいます。
あっ!そこでSPO2低下に気づいて、「先生!急変です!」になってしまっていたんですね!
そうです。でもその数時間前には、呼吸の変化は始まっていることが多いです。特に敗血症の場合は呼吸数増加が早期からおこります。
ですので、SPO2が正常値でも、呼吸数が増減しているときは、要注意です。
SPO2は何を観ている?
呼吸の3要素は、「酸素化・換気・呼吸仕事」に分けられます。
その中で、SPO2は、酸素化と対応しています。呼吸回数は、換気と対応しています。呼吸仕事は酸素化の需要に応じて換気を促しますのでSPO2と呼吸回数どちらにも対応します。
SPO2だけを見ていると、呼吸の3要素のうち、酸素化しか見ることができていないということになります。総合的に評価をするためには、呼吸回数も必須ということです。
SPO2の100%は、PaO2が100mmHg以上のことも
一般的なSPO2の正常値は96~99%です。高齢者の場合は、加齢によって呼吸筋が低下するため、正常値を下回ることもあります。ですが、最低でも90%以上維持が望ましいです。高齢者は、呼吸のために必要な筋肉が低下するので、肺が十分広がってくれません。そのため、本来必要とする酸素の取り込みがしにくくなるのです。
SPO2が低値の時は、原因を考えますよね。
だけど、SPO2が100%の時はどうでしょうか?
SPO2が100%取れていると、酸素化は大丈夫って思います!
ちょっと待って!そのSPO2:100%、本当に大丈夫?
SPO2って、本当にPaO2が100mmHgの時も100%と表示されます。でも、PaO2が150mmHgの時も100%と表示されるのです。SPO2の100%は、PaO2の100~500mmHbまでの幅があります。
酸素投与中のSPO2が100%というのは、酸素化のモニタリングとしては酸素化機能が改善しているか判断がつかないので、不適切です。
そのため、酸素投与時や、人工呼吸器管理、COPDの患者さんは酸素投与量に注意が必要です。
SPO2が100%を示していて、O2を下げる医師指示があるならば、酸素の調節を指示通りにしましょう。また、SPO2の値だけではなく、呼吸回数や呼吸パターンなどの周辺症状を観察することも必要です。
また、COPDの患者さん等で、CO2ナルコーシスを生じているような場合、SPO2が低値だからと酸素を突然上げすぎるのは危険です。
まとめ
パルスオキシメーターでの測定が当たり前になって、SPO2の値で判断してしまうことも臨床では多々あります。SPO2でわかることも多くあります。
でも、基本のバイタルサインは、体温、脈拍、血圧、呼吸数、意識レベル、尿量の6つです。
普段の呼吸数がどのくらいかを把握できるように、毎日ではなくとも週に数回測定しておくと異常時にすぐに気づき、ドクターへ早く報告ができるのではないでしょうか(*^▽^*)
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