採血は看護師が日常的に行うことの一つです。大きな病院では医師がするのかもしれませんが、中小規模の病院やクリニックでは採血は看護師が主にしていますので、採血に慣れていて上手な看護師が多いように感じます。私の働いている病院も、採血は主に看護師の業務です。
採血の指示が出たときに、いくつか種類のあるスピッツのどれから入れれば良いでしょう?採血後、スピッツに入れるには順番が決まっています。ただ、真空管とシリンジの場合で順番が違いますので注意が必要です。
採血時のスピッツの順番は?
採取した血液を入れるスピッツは一つではないことがほとんどです。いくつかあるスピッツのどれから入れていけば良いでしょう。検査項目によっては、スピッツに分注する順番などによって検査値が変動する場合がありますので正しい順番を知っておきましょう♪
注意すべきことは、採血をする時に真空管採血か、シリンジ採血かです。それによってスピッツの順番が変わります。
真空管採血の時
針を刺したら真空管を固定したままスピッツを入れ替えていきます。針を刺した時に少量の組織液が混入します。そのため一番目に使うのは組織液によって凝固しても問題のない生化学のスピッツです。
2番は凝固用スピッツです。凝固スピッツを後回しにしすぎると、凝固がすすんでPTやAPTTなどが延長してしまうためです。凝固を入れた後は、血算、血糖の順番で入れてから他にもスピッツがあれば残りに入れます。
もし生化学が2本ある場合は1本を初めに2本目は血糖の後にします。施設によって決められた方法がある場合はその順番に従いましょう。
生化学(茶)
↓
凝固(黒)
↓
赤沈(オレンジ)
↓
ヘパリンナトリウム(緑)
↓
血糖(グレー)
↓
血算・血液型・BNP(紫)
↓
その他の順番です。
翼状針付き真空管採血の場合は生化学を先にするのには別の理由もあります。
翼状針を使う場合、チューブの分だけ採血量が減ります。そのため、少し採取量が少なくても問題のない生化学を最初に採取します。凝固用スピッツを一番にしないのは、抗凝固剤との混和比率が重要で正しい量が必要なためです。
ですが、高齢者やわかりにくい血管の場合は翼状針のほうが、しやすいですよね。私は療養病棟勤務ですので、高齢の方の採血なため、翼状針オンリーです。
シリンジ採血の時
素早く抗凝固剤と混和させないと凝固してしまうため、凝固用スピッツが1番目です。
凝固(黒)
↓
赤沈(オレンジ)
↓
ヘパリンナトリウム(緑)
↓
血算・血液型・BNP(紫)
↓
血糖(グレー)
↓
生化学(茶)
↓
その他の順番です。
採血時の注意点
採血をする時に注意しないといけない点がいくつかあります。『駆血帯は思うほどきつく縛らなくても大丈夫』の記事でも触れていますが、動脈が止まるんじゃないか?というほど駆血帯をきつく締めないように気をつけましょう。
駆血帯はきつく締めるほど血管の怒張はしなくなりますし、皮下出血をおこしてしまいます。
クレンチング(手をグーパーする)も、筋収縮によってカリウムが高値になりますのでお勧めしません。
溶血に注意
スピッツの中に入っている薬剤と十分混和させることは大切です。ですが、スピッツを激しく振ると溶血してしまいます。緩やかに手首をゆっくりとひねるようにして転倒混和を5回以上行いましょう。
シリンジの場合に分注する時はゆっくりと流し入れることも大切です。勢いよく入れてしまい気泡が混入してしまうと溶血してしまうため、RBCやHtは低値になり、LDHやK、Mgなどは高値になってしまいます。
また、溶血予防に採血時は内筒を強く引きすぎないように気をつけます。
他にも2分以上駆血帯を巻いていたり、23Gより細い針で採血をしたりしても溶血が生じますので注意が必要です。
採血は駆血帯を締めてから1分以内に終了しましょう。
末梢持続点滴をしている側で採血は基本的にNG
検査データに影響します。初めのうちは血管を探すことに精一杯になってしまうこともありがちですが、駆血帯を巻く前に確認する癖をつけましょう。抗菌薬などの場合は採血を先に済ませましょう。
逆の腕がシャントなどで採血ができない場合、末梢点滴側でやむを得ず採血をしないといけない場合もあります。その場合、点滴刺入部をよりも15センチ以上末梢側なら検査データに大きな影響はないと言われています。
駆血帯の外し忘れ・外す順番に注意
採血が終わってホッとするのは、患者だけではなく看護師もだったりします。その安心感から、駆血帯を外し忘れて針を抜いてしまうと、静脈が怒張しているため結構な出血をさせてしまいます。必ず針を抜く前に、駆血帯を外して指の力も抜くよう促し、静脈怒張もなくなったことを確認しましょう。
真空管採血の場合は、採血管を必ず外してから駆血帯を外します。採血管を外し忘れて駆血帯を外してしまうと、スピッツの薬剤が混ざった血液が逆流する危険がありますので注意が必要です。駆血帯をはずしてから採血針付きホルダーをそっと抜きましょう。
採血がうまくいかず何度もチャレンジする
血管が細くてなかなか怒張してくれない、深いところにあるなどで看護師泣かせの血管をお持ちの患者さんや、高齢で血管が細く脆いため針を刺すとすぐに破れてしまうなどでうまくいかないこともあります。
採血しないと!と思って、何度もチャレンジする前に潔く諦めて、先輩に変わってもらいましょう。何度もチャレンジしすぎていると患者さんも苦痛ですし、「血管つぶれて他にとるとこないやん!」と先輩の怒りをかうハメになりかねません。
採血の禁忌部位
採血をするリスクに神経損傷があります。神経の位置は目視できませんが、リスクのある部位を避けて採血することは必要です。
特に注意が必要な穿刺部位は、血管の近くを神経が走行している、肘窩部内側の尺側皮静脈と手関節部の橈骨皮静脈です。
一番安全な部位は、肘窩部親指側の橈側皮静脈です。肘窩部で採血ができない!という場合は、前腕か手背の静脈が安全です。
まとめ
真空管とシリンジではスピッツの順番が変わるので自部署の採血がどちらを採択しているのか確認が必要です。採血はコツをつかむことと、慣れです。数をこなしていくうちに採血のスキルは確実に上がります(^^)v
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